La Fontaine de Belleville(ラ・フォンテーヌ・ド・ベルビル)


ラ・フォンテーヌといえば、17世紀フランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ Jean de la Fontaine。彼と彼の詩を知らなくても、日本のあちこちで目にする名前がラ・フォンテーヌ。ケーキ屋、結婚式場、ヘアサロンに木造モルタル2階建アパート。共通するのは「フランスっぽくていい感じ」を狙った名付けがうかがえる点。

そう、ラ・フォンテーヌは定冠詞「la ラ」の音といい、泉や噴水を意味する「Fontaine フォンテーヌ」のフォンからヌへ抜ける感じが鼻にかかって同じ「フォン」でも von と書くドイツ語の几帳面な響きとは異なる自由で洒脱な雰囲気のザ・フランス語、もといル・フランス語なのです。ELLE Japon に魅了された日本のあちこちで見かけるように、本国フランスでもまた詩人にあやかってあちこちのレストランやカフェがその名前を看板にしています。

今回ご紹介する La Fontaine de Belleville ラ・フォンテーヌ・ド・ベルビル もそのひとつ。ベルビル界隈のラ・フォンテーヌ」の意で “de Belleville” 。詩人の名前をもちつつもロケーションは右岸10区、サン・マルタン運河にほど近い聖ルイ病院の端に背中合わせで位置しています。



もうすぐ創業100周年

ラ・フォンテーヌは元はビストロ。営業免許がこの店に下りたのは1920年のことで、パリで最古のものだとか。確かに店内を見回せば高い天井、壁一面にかけられた大鏡、縁や足元が摩耗した木製のカウンターはどっしりと重量感があり、モザイクタイルでできた床は所々ヒビがみられ、なかなかに年季の入った内装です。特に、大通りに面したガラスの大窓に書かれた店名のフォントデザインはオープン時のものを踏襲しているのか、ノスタルジックささえあります。

では店の雰囲気もクラシックかといえば総じて新しい印象。それは店内でキビキビと動くスタッフによるところが大いにあります。サン・ジェルマン・デ・プレ界隈にある老舗カフェで出迎えてくれるのが白いシャツの襟もピンと張ったギャルソンなら、こちらは店のカラーである真っ青なカフェエプロンを身にまとい、デニムにTシャツ、スニーカーと極めてカジュアル。

英語も Welecome な彼らはパリに新しくできたカフェのスタッフそのものです。もちろん、どちらのカフェでも愛嬌のある笑顔がスタッフの老若男女問わずプライスレスでついてくることは言うまでもありません。



焙煎屋さんのコーヒー

フードもコーヒーも、ビールもこれまでの経験を生かして一新したラ・フォンテーヌ。コーヒーはパリの新しいカフェ・スタイルを牽引する Belleville Brûlerie ベルビル・ブリュルリ で専用に焙煎したもので、酸味の効いたエスプレッソの表面を覆う、クリーミィな泡の層もしっかりあります。エスプレッソはこれがないとね。

老舗ビストロから経営を引き継いfだ Thomas Lehoux トマ・ルー氏はバリスタでもあり、パリでも知られた1杯が飲めるカフェ Ten Bells テン・ベルの共同経営者のひとり。 パリ中のカフェへ焙煎技術と豆を提供するベルビル・ブリュルリにも参画しているルー氏の選んだ豆は確かに美味しく、人気なのもうなずけます。

ビールも忘れずにご紹介しなければいけません。選ばれたのは Deck & Donohue デック&ドノヒュー。パリ郊外は Montreuil モントルイユにある醸造場で作られたビールです。パリのクラフトビールの先駆け的な銘柄です。東京でいうならコエドビールといったところでしょうか。もちろん、食後のカフェが楽しみになるひと皿、ビールが進むひと皿は時間帯によって満足度が違うので期待しすぎないのが吉。

モントルイユは地ビール流行先取りの地でもあるそうなので、こちらで飲んで気に入ったのなら小旅行の計画を立てるのもいいかもしれません。



店構えはそのままに、店名も引き継ぎ

若きオーナーのルー氏は彼がリノベーションできるビストロ(つまり、居抜きで売りに出している)を探していたところに見つかったのがラ・フォンテーヌだったそうです。

ビストロからカフェ・バーヘ美味しくリニューアルしましたが「リノベーション」の表現の通り、内装はそれほどいじられていないのは老舗ビストロと長い間お店を愛してきた客たちの関係を尊重したからとのこと。Time Out の記事によるとルー氏は「歴史があるのは店だけでなく、客もそう。1人ひとりの客がお店との歴史を持っているんだ」と答えています。

驚いたことに営業権の譲渡後、リノベーション工事の間から営業も引き継がれて続けられていたそう。工事中も店を訪れる古くからの常連客は店が変わってしまうことを恐れていたようですが、どうだったのでしょうか。

店名をそのままに引き継ぎ、内装に大きく手をいれることなく床のモザイクタイルもそのままに老舗のエスプリを残した新店は、それも悪くない変化として受け入れられたのではと想像します。

外国人経営者による老舗飲食店の営業権買取からまったく別物へ改装、営業スタイルの180度方向転換は、文化継承の観点で近年パリで問題視されているのですが、ラ・フォンテーヌの場合はその点で個人的に評価が高いカフェです。

Non seulement le bistrot a une histoire, mais chaque client a sa propre histoire avec lui.
- Time Out 



引き継がれるジャズライブ

ビストロ時代から変わらないラ・フォンテーヌの名物は毎週土曜夜のジャズライブ。若手からベテランまで、週替わりで企画されているので気になるひとはFacebook ページをチェックしておきましょう。オーナーが変わっても変わらないラ・フォンテーヌのエスプリはこのジャズライブにあると言っても過言ではありません。

わざわざライブハウスやジャズクラブへ行くのも気がひける、というのであればここで行われるようなカフェやビストロでのライブがおすすめです。基本的にチャージなしで投げ銭ですし、ビール1杯、ワイン1杯からOK。夏季はテラスで涼しい風に吹かれながらが最高です。ラ・フォンテーヌは美味しいビールとカフェ、フードのおかげでライブの客が増えたとか増えなかったとか。

お気に入りのミュージシャンを見つけたり、青田買いをしたりも気軽にしょっちゅう行けるカフェ・ライブならではです。


いい音楽いいお酒、そしていい友人にも出会えるカフェ・バー、ラ・フォンテーヌ・ド・ベルビルへようこそ。


“La Fontaine de Belleville”
ancien bistrot parisien datant de 1920

31-33 Rue Juliette Dodu 75010 Paris, France
Tél. +33 9 81 75 54 54
Fermeture hebdo. : non
Métro(s) proche(s) : Colonel Fabien (2番線) / J Goncourt (11番線)
Site: oui
http://lafontaine.cafesbelleville.com
https://www.facebook.com/LaFontaineDeBelleville.paris/
https://www.instagram.com/lafontainedebelleville/

Horaires 営業時間
Lun(月): 08:00 - 22:00
Mar(火): 08:00 - 22:00
Mer(水): 08:00 - 22:00
Jeu(木): 08:00 - 22:00
Ven(金): 08:00 - 22:00
Sam(土): 08:00 - 22:00
Dim(日): 08:00 - 22:00


Ten Bells テン・ベル http://tenbelles.com
Belleville Brûlerie ベルビル・ブリュルリ https://cafesbelleville.com
Deck & Donohue デック&ドノヒュー http://deck-donohue.com/en/

パリの自家醸造ビール。 | Ovni オヴニー
http://ovninavi.com/820sp/

Press
LA FONTAINE DE BELLEVILLE | Le Fooding.com
https://lefooding.com/en/restaurants/restaurant-la-fontaine-de-belleville-paris
La Fontaine de Belleville | Time Out
https://www.timeout.fr/paris/restaurants/la-fontaine-de-belleville
Voyage dans le Paris des années 60 avec La Fontaine de Belleville | C'est un jour pour.com
https://cestunjourpour.com/2017/05/31/voyage-dans-le-paris-des-annees-60-avec-la-fontaine-de-belleville/

<<記事・写真・情報の無断転載はお断りしています。>>

コメント

人気の投稿